満たされた弱者

重度身体障害者、生活保護受給中。

左手と右手の人差し指を比べる

私の今の身体障碍の原因となった病気は発症率が10万人に1~2人である。
程度の差はあれ身体が動かなくなるが、殆どの人が数ヶ月で元の状態に戻る。
日本では重篤な後遺症が残るのは10%ほどらしい。
ということは私は100万人に1~2人の症例ということになる。

 

その病気の経験者のコミュニティみたいなところで私の経緯を書いてみた。
発症後4年で全く歩けないし握力ゼロで風呂トイレ全介助だけど1人暮らしできますよ、と。
この病気で身体障害者手帳を取るのは難しいとか言われることもあるそうだけど、
原因がなんであれ障碍の程度と回復の見込みに応じて手帳も取れるし、
障害者年金も貰えるし福祉の制度も利用できます。
意外と何とかなりますよ、と。

 

私は歩けるようになりたいですって書いた訳じゃない。
それはもう無理だと思っている。
その上で、不自由なく生きていけるように今の日本はなっている、
だから大丈夫ですよって言いたかっただけだ。

 

だが90%の人にその情報は必要ない。
あまつさえこんなレスが付いた。

私は1年入院しましたが退院時敢えて車椅子を使わないことにしました。
今では歩けています。頑張りましょう!

いやいやいや。いやいやいやいや。
悪気はないのでしょうけど、そして1年入院されたのならそれなりに後遺症は重かったのでしょうけれど。
私には「敢えて車椅子を使わない」なんていう選択肢はない。
室内なら床を這って移動できるだろうけどトイレやお風呂は使えないし、
這って部屋の外に出たら服がボロボロになるだろう。
他人が見たら怖いだろうし。
車椅子を使わないとはそういうことである。

 

その病気の中では重度の経験をするほどに、
自分よりも重度の人を想定しにくくなる。
これは私自身にもいえることで、
なまじ上肢全廃下肢全廃総合1級なんていう身体障害者手帳を交付されてしまうと、
私よりも身体が動く人の困難を軽く見てしまうことは実際ある。

 

でもそういうことじゃない。
歩けるならいいじゃんということではない。
痛みがあったり、動けるからという理由で福祉制度を十分に利用できなかったり、
困難の理由は様々で私が勝手に想像する範囲内に収まるものではない。

 

だから私はそれを忘れないように、
自分の左手と右手の人差し指を比べる。
どっちも私の人差し指だけど、左手はキータイプできない。
左手は薬指、右手は人差し指で今この文字列を打っている。
左手は指を伸ばす力は強いが人差し指と中指が曲げにくい。
それはそれで伸ばす力を利用することもあるけれど、
右手と同じようには使えない。
いくつかの筋肉の回復度合いによって各指は動きも力も全然違う。

 

各指を見ても手全体でできることはわからない。
私以外の誰にも。療法士さんでさえも。
私の指は、病名で症状を括ることはできないということを私に思い出させてくれる。

 

 

広告を非表示にする